世界の手術レジストリ
完全比較ガイド|15+カ国の整形外科・外科系レジストリと日本JOANR/NCDの位置づけ(2026年版)
本ガイドは、米国AJRR・英国NJR・豪州AOANJRRをはじめ、北欧4カ国・オランダLROI・ドイツEPRD・カナダCJRR・日本JOANR/NCDなど世界15以上の主要手術レジストリを、年間登録件数・設立年・PRO収集・リコール検出・国際協調の観点から比較します。NCD(外科系全般 約263万件/年)・JOANR(整形外科全領域 約108万件/年)は、公式年次報告で確認できる年間登録件数で世界最大級です。各数値は各レジストリの公式年次報告書PDFを一次情報源としています。
運営会社について:本サイト運営のSpecialist DoctorsはJOANR運営の一部を担当しており、公式バーコードリーダーアプリのサポート窓口(joanr_support@specialist-doctor.com)として登録されています。本ページは公式情報を一次資料として執筆し、日本のレジストリの国際的位置づけを中立的に分析します。
日本のNCD・JOANRは
年間登録件数で世界最大級
公式年次報告書から確認できる「年間登録件数」では、日本のNCD(外科系全般)・JOANR(整形外科全領域)が世界トップクラスです。以下は公式PDFから確認した直近年の数値です。
NCD(外科系全般)
約263万件/年
2023年(暦年)・累計 約2,848万件
外科系全般(一般外科・心臓血管・呼吸器・消化器・小児・乳腺・産婦人科・泌尿器 等)を悉皆登録する単一国レジストリとして世界最大級。
出典:『2023 NCD Annual Report by the Japan Surgical Society』Surgery Today (Springer Nature, 2024/2025) 論文 / PMC
JOANR(整形外科全領域)
約108万件/年
2023年度(2023/4–2024/3)・実数 1,076,211件
人工関節・関節鏡・脊椎・骨折・腱・神経など整形外科全領域を悉皆登録するレジストリとして世界最大級。
JOANR 2023年度 モジュール別内訳(公式PDF直接抽出)
| モジュール | 2023年度 登録件数 | 対象 |
|---|---|---|
| JOANR基本 | 616,937 | 整形外科全般のKコード |
| JAR | 184,942 | 人工関節(hip/knee/shoulder/elbow/ankle) |
| JSSR-DB | 184,169 | 脊椎一般 |
| JOSKAS eNOTE | 89,826 | 関節鏡視下手術 |
| JSIS-DB | 18,081 | 脊椎インストゥルメンテーション |
| 合計 | 1,076,211 | 登録施設 2,434施設 |
参考:2022年度版は登録症例総数 1,028,153件(うちJAR 172,834件)。2022年度版PDF
参考:人工関節レジストリ単独での比較
「人工関節レジストリ単独」の年間件数では、ドイツEPRDが2023年に378,812件(Hüft 206,573 + Knie 171,790 + Femurersatz 449、Jahresbericht 2024 p.14)、カナダCJRRが2024-2025年度に175,242件(hip+knee)、豪州AOANJRRが2023暦年に146,795件(hip+knee+shoulder)となっています。JOANR内のJAR(人工関節モジュール)は2023年度に184,942件で、人工関節限定では世界最大級ではありませんが、整形外科を全領域(人工関節+関節鏡+脊椎+骨折等)カバーする総合性が日本の特徴です。
出典:EPRD Jahresbericht 2024 PDF (p.14) / AOANJRR Annual Reports / CJRR 2024-2025 PDF
レジストリ50年史
(1975〜2026)
スウェーデンに始まった手術レジストリは、北欧→英豪→米独蘭→日韓と50年かけて世界に広がりました。
※ 各レジストリの設立年・運用開始年は資料により表記が異なる場合があります。最新の正確な情報は公式リソース集からご確認ください。
国別 早見比較表
(19レジストリ)
主要レジストリを「設立年・運営母体・主な用途・累計登録件数・捕捉率(カバー率)・PRO収集・公式URL」で横並びにしました。日本のJOANR/NCDを最初に配置し、世界の中での位置づけを直感的に確認できます。
※ 「─」は、本ガイドで該当数値を公式PDFから直接抽出できなかった項目を示します(PDFの取得制限・本文非掲載・インタラクティブ図表のみ等の理由)。各レジストリの公式年次報告書には記載がある場合があるため、公式リソースから原典をご確認ください。
※ 各セルの数値は、リンク先の公式PDF・公式サマリページから直接抽出した値のみ掲載しています。年々変動します。
※ 主な用途:PMS=Post-Market Surveillance(市販後監視)、QI=Quality Improvement(医療の質向上)、PRO=Patient-Reported Outcome(患者報告アウトカム)。
主要レジストリ詳細
各レジストリの特徴を150〜200字で解説。
🇸🇪 SHAR / SKAR — 世界最古
SKARは1975年、SHARは1979年に設立された世界最古級のレジストリ。北欧の電子化健康IDと連動し、ほぼ完全な追跡が可能。長期データ蓄積で世界の規範となっています。NARA(北欧4カ国共同)の中核。
🇬🇧 NJR — 世界最大級の登録規模
2002年設立。NHSにおける事実上の義務化により95%超の網羅性。Metal-on-Metal人工股関節(DePuy ASR)リコール検出の歴史的功績。サージョン別・施設別アウトカムを公開する透明性の高さが特徴。
🇦🇺 AOANJRR — 質で世界をリード
1999年開始、2002年全国化。100%近いカバー率と20年以上の長期追跡で世界をリード。ASR人工股関節の早期警告(2007年)を世界最初に発したレジストリ。年次報告は500ページ超の詳細版。
🇺🇸 AJRR — 米国の急成長レジストリ
AAOSが運営。2009年設立、累計380万件超の手術データ。米国全体カバー率は約38%にとどまるが、年々拡大中。HOOS JR・KOOS JR・PROMISによるePRO実装を進めるも収集率は20-30%台が課題。
🇳🇱 LROI — PRO収集の世界最先進
2007年設立ながら98%超のカバー率。EQ-5D・OHS・OKS・NRS痛みのePRO収集で世界最先進、収集率も他国より高い。年次報告は英語版完備で国際発信が活発。
🇩🇪 EPRD — UDIバーコード連動
2012年設立、2014年運用開始。任意参加だが、保険会社・病院・インプラントメーカー連携によるバーコードベース実装が特徴。カバー率60%台で拡大中。インプラントUDI連動の世界モデル。
🇩🇰 DHR / DKR — 法的義務化の北欧モデル
1995年(DHR)・1997年(DKR)開始。RKKP(Danish Clinical Registries)が運営。法的義務化により95%以上のカバー率を確保。EQ-5D・OHS/OKSのePRO収集を拡大中。
🇳🇴 NAR — 1987年からの北欧の先駆け
Haukeland University Hospitalが運営。約97%のカバー率。NARAの中核として、北欧4カ国共同の統合解析に貢献。Acta Orthopaedica誌に多数の研究論文を発信。
🇫🇮 FAR — 国家機関主導
1980年設立。THL(フィンランド国立保健福祉研究所)が運営。法的義務により95%以上のカバー率。北欧4カ国共同(NARA)の一員。
🇳🇿 NZJR — 長期PRO追跡
1998年設立、約95%カバー率。Oxford Hip/Knee Scoreを6か月・5年・10年で郵送追跡。長期PROデータの収集モデルとして注目されています。
🇨🇦 CJRR — 連邦制の課題
2000年設立、CIHI(カナダ保健情報研究所)が運営。州により参加状況が異なり、カバー率は約70%。一部州でPROMs実装。
🇯🇵 JOANR — 日本の整形外科レジストリ
2020年運用開始。日本整形外科学会が運営するレジストリ。人工関節・脊椎・関節鏡・骨折を対象に、JAR/JSIS-DB等の既存レジストリを統合する形で運用されています。JOANR入力ガイド。
比較軸別の
国際分析
設立年・規模ではなく「運営構造」「データ品質」の観点から、各国の構造的差を整理しました。
強制力:法的義務 vs 事実上の義務 vs 任意
法的義務化
北欧諸国(SHAR/SKAR/NAR/DHR/FAR)。国民健康IDと連動し、登録漏れがほぼない。長期追跡の質も高い。
事実上の義務化
英国NJR(NHS)、豪州AOANJRR(学会と保険償還の連動)、日本NCD/JOANR(専門医制度連動)。法律ではないがカバー率は95%超。
任意参加
米国AJRR、ドイツEPRDなど。カバー率は60-70%台にとどまる傾向。
PRO(患者報告アウトカム)の実装
ePRO先進国
オランダLROI、スウェーデンSHARが世界最先進。患者がオンラインで直接回答。LROIは収集率も他国より高い。
歴史的に紙PRO
英国NJR、ニュージーランドNZJR。OHS/OKSを郵送で収集。近年、収集率の低下が課題。
PRO実装が拡大段階
米国AJRR(収集率20-30%台)、ドイツEPRD(試験運用段階)など。日本のJOANR/NCDも公開情報からPRO拡充の方向性が示されています。
インプラントUDI / バーコード連動
UDI先進
ドイツEPRDが世界モデル。保険会社・病院・メーカー連携でバーコードベース実装。
バーコードアプリ
日本JOANRは公式バーコードリーダーアプリを提供。インプラント外箱バーコードからサーバ送信。
マスター選択方式
多くのレジストリがインプラントマスターからの選択方式。新製品はマスター追加申請が必要。
データ品質と長期追跡
10〜20年生存率を公表
北欧(SHAR/SKAR/NAR)、豪州AOANJRR、英国NJRが達成済。長期追跡の世界標準。
5〜10年フォロー段階
オランダLROI、ニュージーランドNZJR、ドイツEPRDなど。
短期データ蓄積中
日本JOANR(2020年〜)、韓国KAR(2018年〜)など新興レジストリ。
国際協調プロジェクト
NARA(Nordic Arthroplasty Register Association)
2007年設立。SHAR・NAR・DHR・FARの4カ国が共通データセットで統合解析。Acta Orthopaedicaに多数論文。北欧の先進性を世界へ発信。
公式
ISAR(International Society of Arthroplasty Registries)
2011年設立のICOR(FDA・AHRQ後援)が母体。年次総会で各国レジストリ責任者が集結。国際リコールシグナル検出の中核。
公式
NORE(Network of Orthopaedic Registries of Europe)
EFORT傘下。欧州レジストリ間の方法論調整。データ標準化の議論をリード。
公式
OECD HCQI(Health Care Quality Indicators)
股・膝置換術の30日死亡率等を国際比較指標として公表。OECD加盟国の医療の質を横並びで比較。
公式
レジストリが
リコール検出に貢献した事例
レジストリの公衆衛生上の価値を世界に示した、医療機器リコール検出の歴史。
DePuy ASR(人工股関節)— 2007〜2010
豪州AOANJRRが2007年に世界最初の警告を発表。再置換率が異常に高いことを統計的に検出。2010年に世界規模で回収。レジストリが製造メーカーの自主公表より先に問題を発見した歴史的事例。
Zimmer Durom Cup — 豪州・英国
豪州・英国レジストリで再置換率の高さが指摘され、製品改修・市場対応につながった事例。
ABG II モジュラーステム
豪州AOANJRRが警告。腐食・破損による高い再置換率を検出。
Stryker Rejuvenate / ABG II モジュラーネック
米国・北欧レジストリで再置換率上昇を検出。2012年以降の自主回収につながりました。
教訓
レジストリは「医療機器の市販後安全性を守る公衆衛生インフラ」として機能します。長期追跡と統計的早期警告システムが鍵となり、世界各国のレジストリが連携して市販後監視を担う体制が広がっています。
日本JOANR/NCDの
国際的位置づけ
日本の特徴
- NCDは外科系全般を統合 — 日本外科学会をはじめ多数の学会が連携し、外科領域を横断する統合レジストリとして機能。一般外科・心臓血管外科・呼吸器外科・消化器外科などを単一プラットフォームで扱う構造は世界的にもユニーク。
- JOANRは整形外科に特化 — 日本整形外科学会が運営。JAR(人工関節)・JSIS-DB(脊椎インストゥルメンテーション)・関節鏡などの個別レジストリを統合する形で運用。
- 学会主導+専門医制度連動 — 法的義務化ではないものの、専門医制度との連動により事実上のカバー率を確保する独自モデル。
- JOANRバーコードリーダーアプリ — インプラント情報をバーコードで効率的に収集する公式モバイルアプリを提供。
- 2026年4月の機能拡張 — JOANRに手術時間・麻酔時間項目、病名候補表示、手書き入力調査票などが追加され、入力の利便性が継続的に向上。
日本の取り組みの方向性(公開情報より)
- 長期追跡データの蓄積を継続(JOANRは2020年運用開始)
- PRO(患者報告アウトカム)収集の拡充
- インプラントUDI連動の深化
- 国際協調プロジェクト(ISAR、NORE等)との連携機会
- 英語での研究発信
公式リソース集
(一次情報源)
各レジストリ・国際協調組織の公式サイト・年次報告書URL一覧。
整形外科レジストリ(国別)
- 🇺🇸 AJRR:aaos.org/registries/registry-program/ajrr/ / 年次報告
- 🇬🇧 NJR:njrcentre.org.uk / 年次報告
- 🇦🇺 AOANJRR:aoanjrr.sahmri.com
- 🇸🇪 SHAR:shpr.registercentrum.se
- 🇸🇪 SKAR:myknee.se
- 🇳🇴 NAR:nrlweb.ihelse.net
- 🇩🇰 DHR:danskhoftealloplastikregister.dk
- 🇩🇰 DKR:mykneedata.dk
- 🇫🇮 FAR:thl.fi/far
- 🇳🇱 LROI:lroi-report.nl
- 🇩🇪 EPRD:eprd.de
- 🇳🇿 NZJR:nzoa.org.nz/nzoa-joint-registry
- 🇨🇦 CJRR:cihi.ca/en/canadian-joint-replacement-registry-cjrr
- 🇫🇷 SoFCOT:sofcot.fr
- 🇰🇷 KOA:koa.or.kr
- 🇯🇵 JOANR:joanr.org
- 🇯🇵 NCD:ncd.or.jp
外科系一般・国際協調
- 🇺🇸 ACS NSQIP:facs.org/quality-programs/data-and-registries/acs-nsqip/
- 🇩🇪 StuDoQ:dgav.de/studoq
- 🌐 ISAR:isarhome.org
- 🌐 NARA:nrlweb.ihelse.net/eng/nara
- 🌐 NORE:efort.org/nore
- 🌐 OECD HCQI:oecd.org/health/health-care-quality-indicators.htm
世界レジストリに関する
よくある質問
世界で最も古い手術レジストリは?
スウェーデンのSKAR(Swedish Knee Arthroplasty Register、1975年)が最古とされます。続いてSHAR(Swedish Hip Arthroplasty Register、1979年)、NAR(Norwegian Arthroplasty Register、1987年)など北欧諸国が先行しました。日本のJOANRは2020年運用開始で、世界の中では新しいレジストリに分類されます。
世界で最もカバー率が高いレジストリは?
豪州AOANJRR、英国NJR、北欧諸国(SHAR/SKAR/NAR/DHR/FAR)、オランダLROIなどがいずれも95〜100%程度のカバー率を誇ります。これらは法的義務化または事実上の義務化、加えて国民識別IDによる長期追跡基盤を持つことが共通点です。日本のNCDおよびJOANRの最新カバー率は、それぞれの公式年次報告でご確認ください。
レジストリのPRO(患者報告アウトカム)収集はどの国が先進的ですか?
オランダLROIとスウェーデンSHARが世界最先進です。LROIは早期からePROを実装し、収集率も他国より高い水準を維持しています。英国NJRも歴史的にOHS/OKSを収集してきましたが、近年は収集率の低下が課題となっています。
レジストリが医療機器のリコール検出に貢献した代表事例は?
DePuy ASR人工股関節(豪AOANJRRが2007年に世界最初の警告、2010年回収)が最も有名です。他にもZimmer Durom、ABG II、Stryker Rejuvenateなど複数の事例で各国レジストリが早期警告を発しました。これらの実績がレジストリの公衆衛生上の価値を確立しました。
日本のJOANR/NCDは世界の中でどの位置にありますか?
NCDは外科系の症例集積において広く活用されているレジストリで、最新カバー率はNCD公式年次報告でご確認ください。一方、JOANRは2020年運用開始のため、長期追跡データの蓄積、PRO(ePRO)実装、インプラントUDIバーコード連携、英語での国際発信などが今後の課題と一般に認識されています。学会主導+専門医制度連動の事実上の義務化は日本独自の特徴です。
国際協調プロジェクトにはどんなものがありますか?
主なものに、北欧4カ国共同のNARA(Nordic Arthroplasty Register Association)、国際学会組織のISAR(International Society of Arthroplasty Registries、旧ICOR)、欧州レジストリのNORE(Network of Orthopaedic Registries of Europe、EFORT傘下)、OECDのHCQI(Health Care Quality Indicators)があります。
レジストリの「強制力」と「任意」では何が違いますか?
法的義務化(北欧諸国・デンマークなど)は登録漏れがほぼなく、長期追跡の質も高い反面、国家データベースとして整備するハードルが高い構造です。任意(米国AJRR・ドイツEPRDなど)はカバー率が60〜70%台にとどまる傾向があります。日本は法的義務ではないものの、専門医制度との連動による事実上の強制力でカバー率を確保しています。
どのレジストリが最も透明性が高いですか?
英国NJRはサージョン別・施設別アウトカムを公開する透明性の高さで知られています。豪州AOANJRRも500ページを超える詳細な年次報告書を公開し、データの公共性において世界の規範となっています。
日本のレジストリで今後注目される取り組みは?
公開情報からは、(1) ePRO実装の拡充、(2) インプラントUDIバーコード連携、(3) 長期追跡データの蓄積、(4) 国際協調プロジェクトとの連携、(5) 電子カルテ連携、などの方向性が読み取れます。最新の取り組み状況はJOANR公式・NCD公式をご確認ください。JOANR入力ガイドとNCD入力ガイドもご参照ください。
日本のレジストリ運用に関するガイド
日本のJOANR/NCDの実務的な入力ガイドは以下からご覧いただけます。本サイト運営のSpecialist DoctorsはJOANR運営の一部を担当しています。
JOANR入力ガイド NCD入力ガイド SIMY(音声AI)の仕組み